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交通事故のパターンと【過失割合】その裁定とポイント

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交通事故には、追突事故交差点事故玉突き事故駐車場での事故追い越し事故などさまざまなパターンがあります。今回はこれらの過去の裁定例(交通事故紛争処理センターの交通事故裁定例集32 平成25年度版を参考)から、損害賠償請求におけるポイントについて解説したいと思います。

 

○その1:追突事故の場合

 

追突事故は、交通事故の中でも非常に発生しやすい交通事故の一つです。追突事故の場合は、交通事故の規模としては比較的小さいため、損害額が低い傾向にありますが、次のような点に注意をする必要があります。

 

ポイント1:人身事故か物損事故か

 

追突事故は軽度な場合は現場で対応した警察官が「物損事故」として処理をする可能性があります。ただ、事故現場で特に症状がなかったとしても、追突事故の場合は「むち打ち症」の危険性があります。むち打ち症は事故後数日たってから発症する事も多いため、その場で特にクビが痛くなくても安易に物損事故と決めつけてはいけません。そのため、追突事故の場合、事故当日もしくは翌日には必ず整形外科を受診して精密検査をしてもらいましょう

そして、万が一異常が認められた場合は、人身事故への切り替え手続きを警察署に連絡して行ないましょう

 

 

ポイント2:後遺障害認定が慰謝料増額の分かれ道

 

追突事故による慰謝料請求は、むち打ち症が「後遺障害」に認定されるかどうかでその金額は100万円以上変わってくる可能性があります。そのため、万が一交通事故でむち打ち症と診断されたら、できる限り早めに弁護士に相談して適切な対策をとりましょう。

 

 

ポイント3:加害者が過失割合をごねる場合がある。

 

追突事故の場合、基本過失割合は追突した側が100であり、一般的には「もらい事故」という表現をします。けれどもいざ示談となると、加害者側がこんな主張をしてくる場合があります。

 

  • 「こんな場所に車をとめておく方がわるい」
  • 「被害者が急ブレーキを踏んだせいでぶつかった」

 

こうなると、過失割合の認定は難航する可能性があります。実際、追突事故でも、被害者の車の停車場所や、急ブレーキの有無などによっては多少被害者にも過失が認定される可能性があるため、万が一加害者が過失割合でごねてくる場合は、迷わず弁護士に相談して以後の示談交渉を代わってもらいましょう。

 

なお、追突事故の中でも争われるケースとして、「玉突き事故」があります。玉突き事故の場合、裁定では、玉突き事故のそもそもの要因となった最初の追突事故を起こしたドライバーに対して90という過失割合が認定されましたが、その後ろから追突してきた車に対しても前方不注視および車間距離保持義務違反があったとして10の過失割合が認定されています。(大阪支部平成25年6月20日裁定・大審第960号より)

 

○その2:駐車場での事故

 

駐車場での事故は、道路交通法が適用されない可能性があるため、正確には交通事故ではない場合がありますが、それでも車同士が接触して損害を受ければ、当然損害賠償義務が発生します。

駐車場の事故で多いのが、「バック中(後退中)の接触事故」です。駐車場では油断することが多く、注意力が低下している場合があり、ちょっとしたバックをする際に、バックミラーやサイドミラーを確認しない人がおり、これが接触事故の原因となっています。

 

 

ポイント:駐車場での事故の争点

 

駐車場での事故の争点は、ズバリ「過失割合」です。駐車場での事故は人身事故を除き、低速で運行している事がほとんどですから、接触したとしてもそこまで大きな損害は出ません。ただ、その費用をどっちがどれだけ負担するかで、少ない金額だとしてもかなり揉めます

過去、駐車場での事故をめぐって裁判にまで発展した例で言うと、後方確認をせずにバックをしてきた車に対して100の過失割合が認定され修理費全額の損害賠償が認められました。このケースでは、「被害者側もいきなり車を前進させてきた」とする無理矢理な主張をしていましたが、裁判では認められず、バックした側のバックミラーによる確認を怠った過失を重く認定しています。(札幌支部平成25年5月23日裁定・札審第549号より)

 

 

○その3:交差点での事故

 

交差点での交通事故は、右直事故直進同士の事故、などさまざまな態様が考えられますが、直進車同士の出会い頭の衝突で多いのが、一時停止の無視です。

過去の裁定では、優先道路を走行していた車が、右方から一時停止を無視して交差点に進入してきた車と衝突した事案で、優先道路走行車5:右方進入車95の過失割合が認定されました。この事故形態では、基本過失割合は10:90とされていますが、右方進入車が一時停止を試みたもののスリップしたため「さらに加速して交差点を早く通過してしまおう」という危険な判断をとったことがわかり、過失割合が厳しく見られました。(札幌支部平成26年3月12日裁定・札審564号)

 

なお、このようなスリップ事故は、東北や北海道などで多く発生しています。運転する際には、これからの冬の時期、路面の状況なども十分確認して慎重に運転しましょう。

 

○その4:人との接触

 

死亡事故に至る可能性が最も高い交通事故が、車と人との接触です。今回は、明暗が分かれた2つの裁定例をご紹介します。

 

・人が車の間から出てきて道路を横断するケース

 

普段運転していて、急に道路に飛び出してくる人や、横断禁止の道路を横断している人をよく見かけます。これまでにも、ヒヤッとした方もいるのではないでしょうか。

このような場合、裁判上は、どのような判断がされるのでしょうか。

 

【過失割合の判定要素とは】

 

通常、横断歩道を歩行中の人と接触した場合は、車側に100の過失割合が認定されますが、横断歩道ではない通常の道路を歩行者が横断中に接触した場合、歩行者側にも20の過失割合が認定されます。

実際の裁定においても、渋滞している車の間を通って反対側の道路までわたろうとした歩行者がはねられた事案で、ドライバー側に80の過失割合が認定されました。(高松支部平成25年11月6日裁定・高審第255号より)

 

ただ、これが横断禁止道路だった場合は少し変わってきます。横断禁止の標識があるにも関わらず横断した事例では、歩行者側の過失が重く見られ、40:60まで過失割合が修正されました。

 

この事例では、横断した歩行者は反対側にあるコンビニにトイレを借りに行こうとしていたようです。

裁判上も、切迫した尿意があったと主張をしていたようですが、それでも横断禁止道路をわたって良いという事には当然ならず、またどうしてもわたるのであれば、車が来る事を予め予想して左右を十分確認すべきであった、と裁判において指摘されています。(大阪支部平成26年3月4日裁定・大審第973号より)

 

 

このように、交通事故の種類によって争点となるポイントは変わってきます。ただ、一つ言える事は、どれも早い段階で弁護士に相談をしていれば、自分にとって有利に交渉を進められるという事です。

ですので、何より安全運転を心がけ、車間距離をとること、また歩行者としても車の往来を確認し、よく注意して道を渡るなど、基本的な交通安全を普段から心がけたいものです。

そして万が一交通事故にあわれましたら、できる限り早めに弁護士に相談しましょう。

 

当事務所では、無料相談も行っておりますので、埼玉県越谷市はじめ、春日部・吉川・三郷・八潮・草加・川口・東京都足立区などの方で交通事故にお悩みの方は是非ご連絡ください。

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